「如何物食い」補足

 

 

  2016年12月10日にpixivに投稿した小説(薬研単体)「如何物食い」。その世界観の解説を同年12月25日に別サイトにて投稿したものを、加筆修正したうえでこちらに移させていただきました。

 

 以下、本作の世界観の簡単な説明となっています。筆者の力不足で本編に入れきることができなかった設定も飛び出します。

 

 物語だけを楽しみたい方にとっては完全な蛇足だと思われますので、ブラウザバックをお勧めします。そうでない方は、是非お付き合いください。作品と合わせて愉しんでいただければ幸いです。

 

 なお、本作は、Twitterタグ「#路地裏男士」(企画主催:江村えむ様【@ph_666c】)に参加させていただいたものです。

 

 

 この作品のタイトルとなっている「如何物食い(いかものぐい)」とは、悪食のことです。
 
 悪食について辞書を引くと、
 
①普通、人が口にしない物を食べること。
②粗末な食事。粗食。
仏教で、禁じられた獣肉を食べること。

とあります。

 ここからも分かるように、今回は、奇怪な物を食べる刀剣男士のお話です。
 
 
 今回の物語の主人公である薬研藤四郎には、常人には理解できない物を食べる習慣があります。この薬研は、自身の本体である、刀の「薬研藤四郎」を食べるのです。しかも、薄暗く、ジメジメとした路地裏で人目を忍んで。

 薬研が、刀身を食べるようになった理由。これは、作中では明記されていませんが、きちんとした理由があります。
 
 彼は、自分自身を食べることで、自身の存在を補おうとしているのです。

 これは、彼が現存していないことに由来しています。彼は刀身が現代に残っていないために、伝承中にしかその存在を認めることができません。それは、付喪神として形を成している彼にとっては、無視できない由々しき事態です。なぜなら、付喪神とは人々の思いを受けて成り立つ存在であるから(少なくとも私自身はそのように考えています)、です。ここでは、現物があった方が、わかりやすく人々の「想い」を受けられると解釈しています。要は、偶像崇拝の要領です。
 

 ですから、この本丸では、薬研に限らず、本体が現存しない刀は、珍妙な物を食べています。それは、自身の刀身であったり、拵えであったり、名の由来になったものであったり、矜持に関係するものであったりと様々です。まあ、なんにせよ、なにかしら、人間が食べようとは思わないであろう物を食べています。

 そしてそれが、薬研の場合は、薬研自身の刀身でした。
 
 
 彼が食べる薬研藤四郎は、路地裏にあるポストに届く薬研藤四郎です。その薬研藤四郎は、数多存在する各本丸の受取箱の中で忘れ去られたものたちです。言ってしまえば、捨てられたものたちです。ですので、「このポスト≒ゴミ箱」です。

 ポストとは本来、手紙を投函するための箱です。ひとに思いを伝える手紙や、自分自身の未来を決める書類を送り出すための窓口です。私たち消費者側からすれば、ポストの中に物を入れることはあれど、そこから直接物を取り出すことはありません。ですので、「ポストに刀が届く」という現象は、正規の流れとは言えません。

 なぜ、そんなことが起きたのか。

 その原因は、受取箱にあります。

 受取箱は、原則、どの本丸にもあります。現代で言うところの郵便受けです。これがいっぱいになり、受取り期限を過ぎたものが溢れたがために、逆流が起きてしまったのです。人間、限界まで食べ続け、腹十分目を超えると逆流が起きそうになります。あれと同じです。
 
 そして、もうひとつ。受取期限のあるもの、賞味期限のあるもの、返納期限のあるもの。世の中にはそういうものが沢山あります。受取期限を過ぎたものは受け取ることができないですし、賞味期限を過ぎたものは美味ではない。返納期限を過ぎたものは延滞料金を支払う必要があります。このように、「期限」を過ぎたものには、なにかしらの代償を支払わなければいけません。本作においても、それぞれに対して代償が支払われています。

 刀剣の受取期限の超過について、審神者に対しては、受取箱からの刀剣の消失という形で。それを食らう薬研に対しては、消費期限切れのものを食べているわけなので、味覚の混乱という形で。

 そして、これは完全な蛇足なのですが、あのポスト付近にあった張り紙にある「業者」という言葉。この言葉が指し示す存在とは、歴史修正主義者のことです。彼らは週に一回、ポストに届いた刀剣を回収し、戦闘用の傀儡にするなりなんなりして、それらを有効活用しています。(これは、倒しても倒しても彼らの勢いが衰えないのは、どこからか兵力を調達しているはずだ、という思考から来たものです。)ですから、時の政府あるいは日本国民も、敵の戦力増強という形で、代償を支払わされているのです。
 
 
 因みに、毎週回収される薬研の分量については以下の通りです。

 毎週忘れられて届く量を100パーセントとすると、毎週金曜日に業者が回収する量はおよそ、その40パーセント。ポストに入る量がそもそも、そのくらいです。
 
 100パーセント中「新しい薬研藤四郎」が50パーセント、「朽ちかけの薬研藤四郎」が50パーセント。
 
 ポストがいっぱいになると、古いものから順に外に吐き出されます。
 
 その吐き出されたものと、投函口からはみ出しているものを薬研は食べます。
 
 彼が一回に食べるのは多くて全体の20パーセント。
 
 外に吐き出されるのが100パーセントのうち60パーセントですので、外に残っているのは100パーセント中40パーセント。
 
 うち30パーセントが「朽ちかけの薬研藤四郎」で、10パーセントが「新しい薬研藤四郎」。
 
 朽ちかけ=消費期限切れ、新しい=賞味期限切れ、と考えます。朽ちかけのものは腐って土に還るので、業者に回収されずに残るのは10パーセント。
 
 これは次の回収日までに朽ちかけになって土に帰ったり、薬研に食べられたりします。
 
 だから、業者が回収するのは毎週40パーセントです。
 
 これは、不用品から得られるある意味副産物的な戦力補充量としてはまずまずの値ではないでしょうか。
 
 
 補足説明はひとまず以上です。またなにか思うことがあれば、加筆を行うやもしれません。
 
 長い間お付き合いいただき、ありがとうございました。